平井 孝治

ASD:血液の脂質からアプローチ

  • 平井 孝治
  • HIRAI Takaharu
  • 医学部 助教(コミュニティ看護学)

Profile

1987年、富山県生まれ。2020年、大阪大学?金沢大学?浜松医科大学?千葉大学?福井大学連合小児発達学研究科修了。2010年、国立精神?神経医療研究センター看護師。2013年、新潟医療福祉大学健康科学部看護学科助教。2017年より現職。
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摂食障害と出会い、自閉スペクトラム症(ASD)研究へ

 私が東京で看護師をしていた十年ほど前、重度の摂食障害の患者を担当しました。当時十代後半の女性、身長155㎝ほどで体重は20㎏台でした。痩せることに固執して無理なダイエットを続け、食べては嘔吐を繰り返したあげく、心が辛くなり自傷を繰り返すなどして心身ともに疲弊していました。この女性は、今も社会復帰が叶わずにいます。どうすればこの女性を救えたのか。答えは見つからず、悔いが残っています。この経験が、私を今の自閉スペクトラム症(ASD)研究に向かわせたのです。
 摂食障害は、ASDの人にも多いと気づいたことが発端です。ASDは神経発達障害の一つで、社会的なコミュニケーションや人とのやりとりがうまく出来ない、興味や活動が偏るといった特徴を持っています。感情や認知といった部分に関与する脳の異常だと考えられていますが、本質的な仕組みは分かっていません。本学でも様々な研究が進んでおり、中国足球彩票発達研究センター?松﨑秀夫教授らは、血液中の脂質の輸送を担う超低密度リポタンパク質(VLDL)が、ASDの人では減っていることを発見しました。
 そこで私は、VLDLがリポタンパクリパーゼ(LPL)という酵素によって分解されることに着目し、ASDの人の血液中LPLの活性と濃度を調べました。ASD男性と定型発達男性の各28人を比較。その結果、ASD男性の血漿におけるLPLの活性と濃度の比は有意に高いことが分かりました。私は、LPLがASDの原因に関わっていて、将来、根本的な治療が究明される可能性もあると期待しています。

ASDの人の血管内を流れるリポタンパク質(イメージ)

社会が理解を深めることこそ

 ASDの人は、大人になってから社会とうまく付き合えないことで、ようやくASDだと気づくケースがあります。一方、得意なことや特別な才能を活かし、社会で活躍できる人も少なくありません。この症状の根本的な治療への道のりは、まだまだ遠いと思います。私たちがASDを理解し、ASDの人が社会に加わりやすい環境を創ることは、誰にとっても暮らしやすい未来になるのではないでしょうか。

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