雪室の神秘

 かつての冷凍倉庫に積まれているのは約180トンの雪。ここは雪の力で冷やす天然の冷蔵庫「雪室」。日本では「日本書紀」などに氷室の記録が残っており、奈良時代には冬の雪や氷を保存し、春から秋に活用していたとされています。雪室は1年を通して温度のゆらぎが少なく低温に保たれ、また相対湿度90%以上の高湿度環境下にあります。低温に置かれた食品は冬眠しているかの状態になり劣化?酸化が抑えられるうえ、食品が乾燥せずに新鮮さを保ちやすく、不快成分が抑制されるため食品の風味が向上すると言われています。さらに冷蔵庫のように機械的な振動や光や温度の変動の影響を受けにくい状態で保存されるため、雪室は環境ストレスが少なく、食品の保存に適した環境です。
 本学工学部 建築?都市環境工学科 寺﨑寛章講師は福井県勝山市にある奥越前かつやま雪室で雪利用の研究をしています。雪室を一定期間安定的に利用するためには外気温などの影響による雪の残雪量と室内の温度の関係が重要となります。つまり雪室内に何トンの雪を入れた場合に、室温が何度になり、それがいつまで続くのかを予測することにより、雪室内に保存した食品の適切な管理に役立ちます。なお、雪1トンの利用を石油で換算すると約10リットル分、CO?換算で約30キロ分が削減できると言われており、雪氷熱エネルギーを利用することは脱炭素化を後押しします。
 この研究を通して、雪の利用を促進させることでSDGsにも繋がることが期待されます。